The Highly Sensitive Person

Introversion, Extroversion and the Highly Sensitive Person

内向型、外向型そしてHSP

By Elaine - 108 Comments

 今回はジャクリーン・ストリックランド, LPC(ライセンスド・プロフェッショナル・カウンセラー)によるゲストブログです。

(※訳者より:ジャクリーン・ストリックランド氏は、アメリカでHSPの集いをアーロン博士と一緒に始めるとともに長年にわたり主催している方で、映画『The Untold Story(語られなかった物語)』にも出演しています)

 HSPのドキュメンタリー映画『The Untold Story(語られなかった物語)』によれば、世界中の人々のうち、1.4億人はとても敏感な人たち(=HSP、全人口の15-20%)で、エレイン・アーロンの研究が示しているように、その人口の15-20%を占めるHSPのうち、さらに30%が外向的なHSPで、数字にするとざっと420万人の外向型のHSPがいることになります。残念なことに、主にソーシャルメディアや最近出版された内向性に関する本が原因で、この420万人の人たちは間違ったレッテルを貼られるか、あるいは外向型という大きなカテゴリーの中に一括りにされてしまっている。たとえば“外向的な内向型”あるいは“社交的な内向型”、もしくは“瞑想的な外向型”などと呼ばれることも少なくありません。

 ここで重要なのは、“内向的なHSP”と”外向的なHSP”そして“自分をHSPとは思わない人たち”をきちんと区別することです。HSPだったら内向型・外向型いずれかにかかわらず、誰もが4つの主要な特徴を持っている。研究心理学者としてエレイン・アーロン博士が、Psychotherapy and the Highly Sensitive Person (2010.)の中で明らかにした4つの特徴です。

その4つとは以下のD.O.E.Sで示されます:
1) Depth of Processing:処理の深さ
2)Over Stimulation:刺激過多になりやすい
3) Emotional Responsiveness & Empathy:感情反応の強さと高い共感性
4) Sensitive to Subtleties:微妙なことへの敏感さ

 HSPではない残りの80%の人たちは、この4つの特徴を持っていないのはもちろんのこと、関連する要素も持ち合わせていません。

 ではどうして最近、この内向性・外向性そしてHSPの間の境目が曖昧になってきてしまったのでしょう? そのわけは簡単です。内向性に関する非常に有益な二冊の本、“『内向型を強みにする』マーティ・O・レイニー(2002)”と“『Quiet 内向型人間の時代』スーザン・ケイン(2012)”が相次いで出版されたから、それがこの混乱を生み出している、私はそう思っています。もちろん二冊の本は両方とも、内向型の人のみならずHSPにとってもとても有益な本になっています。

 『内向型を強みにする』(務台夏子訳、パンローリング 2013年)は、内向型と外向型との間のギャップを埋めるという素晴らしい仕事をしています。私が彼女の本が特に好きな理由は、著者のレイニーが、無視されている、軽視されていると感じている、あるいは“あなたはどこかおかしい”と見なされてきた人たちを、支持する側に立っていることです。こうした感情は、(2000年以来、私が敬意を持って一緒にワークをしてきた)HSPの人たちが共有しているものと、ほとんど変わりません。

 スーザン・ケインの『Quiet 内向型人間の時代』(古草秀子訳 講談社 2013年)も、研究に基づいて書かれた見事な本となっています。しかもケインはこの本の中で、7~10ページをさいて、エレイン・アーロンの研究についても紹介しています。ただ、感覚処理感受性(訳者注:HSPの専門用語)の定義と内向性の定義が混同してしまったのは、おそらくここからだと思うのですが、どうでしょう? 残念なことに、この本では、期待されるこの二つの性質の相互関係そして重複についての議論が、まったく省かれています。ケインは、あえて内向性をより広く定義することで、主張を明確にし、曖昧さをなくそうとしたのでしょう。ジェローム・ケーガンやエレイン・アーロン、その他多くの研究を、この本の中で引き合いに出しているのは、まさにそのためだと思われます(Quiet P. 346)。

 実は、スーザン・ケインは、2006年にマリン郡ウォーカー・クリーク牧場で行われた第10回HSPギャザリング・リトリート(=HSPの集い)に参加しています。そして私は、”Quiet”の中で、彼女がリトリートでの経験を詳しく説明してくれたことをとても嬉しく思いました(p.170~171)。彼女が、内向性と敏感さとの関連性について関心を持ってくれたのは、まさにこのリトリートだったからです。後になって、私は光栄にもアーロン博士と一緒に、この本のため、彼女のインタビューを受けることになりました。ところが、出版された本の中身を読んだとき、私は戸惑い、そしてちょっとばかり落胆せざるを得ませんでした。その理由の大部分は、非HSPで内向型の私のパートナーについての記述がどこにも見当たらなかったからです。HSPで外向型の私についての記述は、あちらこちらにあったのにもかかわらず…。そしてすぐに私は、アーロンも同じような落胆の気持ちを共有していることに気がつきました。

 実際、アーロンはPsychology Today のブログ記事(2012)の中で以下のように述べています。

“彼女(ケイン)が本の中で展開している“内向性”についての考察は、いまやHSPの標準的な定義となっているものとほとんど変わりません―深く考える、時間をかけて情報を処理する、刺激に対して敏感、感情的な反応が強い、一人になる必要がある、など。これらはすべて、1997年に発表した敏感さについての科学論文に書かれています。“

Psychology Todayのすべての記事を見るにはこちらから

 さらに”Quiet”の中の以下の部分を読んでほしい。ここにあるようにケインが内向性を広く定義したと考えると、今回の混乱がうまく理解できます。

“…この本で焦点をあてているのは、つぎのような特質のどれかにあてはまる人々だ。思慮深い、理性的、学問好き、控えめ、繊細、思いやりがある、まじめ、瞑想的、神秘的、内省的、内部指向、丁重な、穏やか、謙虚、孤独を求める、内気、リスク回避的、神経過敏…”(Quiet p.345)。“

 外向性については、ケインは以下のように定義している。

“彼らの特質は、意気軒高、明るい、愛想がいい、社交的、興奮しやすい、支配的、積極的、活動的、リスクをとる、鈍感、外部志向、陽気、大胆、スポットライトを浴びるのが好き…”(Quiet p.345)。

さらなる混同

 これ以外にも、現代には、内向性と外向性を対立させるような定義がたくさん存在しています。そしてソーシャル・メディア・サイト(※訳注:FacebookやTwitterなど)の多くが、内向性についてのそんな情報にあふれている。さらに、マイヤーズ・ブリッグスや似たような性格診断が、この混同に拍車をかけている。例えばそういった性格診断は、こんな風に正しく定義しようとする―“外向性の人は、他の人たちと過ごしたり、様々なイベントや社会活動に参加することでエネルギーを補給する”、そして内向性については“一人になり、内的な作業や、考えることに時間を取るか、静かで、思索するような活動に参加することでエネルギーを補給する”と。

 でもここで、私たち外向型のHSPはこう問わずにはいられない、「じゃあ、外向型のHSPはどうなの?」と。私たちだって一旦立ち止まって確認する(何度も考える)し、深くて複雑な内面世界を持っている(とても内省的)、だからこそ誰かと深く繋がった時はその世界は生き生きとするし(外向的だけどこういったところは内部指向的)、一日の出来事を消化するのには特別なダウンタイムの時間を取らなければならない。それ以外にも、他人より寝る時間、一人になること、そして過剰な刺激から回復するのにも時間を必要とする。だからこそ、みなさんにわかってほしいのです。HSPを広く内向型と混同してしまうことが、どれだけ安易なことであるかを。

 実は、私を外向的HSPの研究へと駆り立てたのは、こうした混同でした。そして次のような研究を行ってきたのです: 10年を超えて100人以上からアンケート調査を行う、35~70歳までの37人を対象とした外向型HSPへの綿密な半構造化面接、そして16年で33回に及んだHSPギャザリング、そこから得たHSPについての私自身の民俗学的観察です。そしてこれらの研究は、認定プロフェッショナル・カンセラーとしての私の20年に及ぶ経験(そのうちの17年はHSPだけに関わってきました)によってさらに深められました。それだけではありません、その一方で私は1991年にマイヤーズ・ブリックスが正式に使われるようになってから、ずっとそれを用いて性格評価をしてきたのです。

 しかし私がどんなにマイヤーズ・ブリックスの大ファンだったとしても、HSPに関わる仕事をする上で、この性格診断が、SPS(感覚処理感受性)の研究が生まれるずっと前に出来たものであることに注意を払わなければなりませんでした。そしてこの両者の間のギャップ、それこそが私のクラス―Myers Briggs with the HSP Overlay(直訳すると“マイヤーズ・ブリックスとHSPの重ね合わせ”)―を生むインスピレーションとなったのです。このクラスは今、他の多くの洞察と併用することで、“内向型HSPと外向型HSP”を“一般的な内向型・外向型のカテゴリー”から区別するのに役立っています。

外向型HSPを理解する―本当のことと誤解されていること

  • 外向型のHSPは、ケインがQuietで述べたような内向型の基準を、全てではないとしてもそのほとんどを満たしています。私たちは時間をかけて考え、内省的で、そして優しく穏やかで、共感力があり、創造的で、先見性があり、熱心で洞察力が鋭い。また私たちの中には、社会正義運動家や教師、人道主義者、詩人、スピリチュアル・ティーチャーもしくはカウンセラーになっている人たちも多い。そして現代社会が持つ“乱雑さ”よりも、刺激の少ない環境を好む。
  • HSE(外向型HSP)は内面世界へ向かうことをとても必要とする。その静かな環境の中で、私たちは休養し、そして内部の深い処理をする。それは本来のHSPに戻るということでもある。この内面における状態はまた、私たちHSEのスピリチュアルな人生の住処であり、外の忙しい世界から再生する場所でもある。
  • 一方で、HSEは外の世界からエネルギーをもらうことが必要となる。なぜなら内面の世界で時間を費やし過ぎると、活力が失われ、イライラし始め、やる気がなくなり、さらにはちょっとばかり鬱っぽくなるからです。そんな時、外の世界に行き、活力とエネルギーを与えてくれるような“新しい”刺激が、私たちには必要なことがわかります。“新しい”というところに注目してほしい。外の世界に求める刺激は、新しくなければならないのです。そしてそれは私たちが自ら選んだもの、個人的なニーズに基づいたものでなければならない。さもなければ、内向的なHSPとまったく同じように、その活動は刺激過多になってしまうでしょう。さらに、私たちは外に出て、大いに楽しんだ後でさえ、刺激過多になった状態で家に戻ることが多い。そんな時、体は疲れ、いつもより睡眠時間や処理する時間が必要となります。
  • HSEはアンビヴァード(両向型=外向型と内向型のどちらでもない)とも異なる。なぜか? 両向型は、積極的に外の世界に出かけ、社会活動に携わることもあるでしょう。でも刺激過多にならずにそれを楽しむことができるし、また深い処理をすることもありません。それにHSPだったら感じる小さな刺激に気づくこともないからです。すでにお話ししたDOESの特徴についても同様です。
  • HSEは、自分にとってより好ましいと思う環境であれば、一人一人が素晴らしい反応をみせます。そして私たちが見せる喜び、好奇心そして熱意は、まさに外向型のそれだと多くの人の目に映るかもしれません。HSEの熱意は周囲の人たちを巻き込む力をもっています。でも、注意を怠ればすぐに刺激過多になってしまうし、同じように他の人たちを刺激過多にしてしまうかもしれません。逆にネガティブな環境においては、HSEは内向的なように見えてしまうかもしれない。そのような環境では、私たちは静かになり、控えめになり、場合によっては人と交わらなくなってしまうからです。このことについてのさらに詳しい説明は、ベルスキーとプルースの“感受性差”についての研究(2009)をご覧ください。
  • 内向型のHSPとは異なり、HSEは外の世界に有意義な時間を作り出したいと思っている。そして多くの場合私たちは、そのユニークな冒険に他の人たちを巻き込む触媒となる。一方、そうした活動のきっかけをつくるまさにその人であるにもかかわらず、自分より内向的な仲間たちを置いて、すぐにそれに飽きてしまったり、エネルギーを使い果たしてしまうかもしれない。
  • 刺激過多な状況に向かいがちなその性質ゆえに、HSEがイベントを早く抜け出すことも珍しいことではありません。たとえその活動が楽しかったとしても、“興奮しすぎた、疲れてしまった”と感じて家に帰ってしまうかもしれません。エネルギーを与えてくれる、自ら選んだ活動そのものが、私たちを疲れさせ、一人になりたい、休みたいと、思わせるのです。
  • HSEはよく、外の世界の、面白い、新しい、創造的な活動に携わっています。そしてそうした活動を、1~2人以上の人たちとするのを好みます。外で自分の好きな活動をしている時、私たち友好的で他の人々を惹きつける。そしてたいてい知らない人に自分から話しかけ、会話を楽しみ、彼らが新しい友人になることもあります。
  • 神経伝達物質であるドーパミンが外向型の脳を活性化し、ステータスという外的報酬、お金、セックス、社会的な結びつき、あるいは仕事における昇進などを追及させる、とする研究があります(レイニー 2002)。しかしぜひ知っておいてほしいは、外向型・内向型に関係なく、HSPはこれら外的な社会報酬によって動機づけられることはない、ということです。いや、むしろその正反対なのです。外向型のHSPも内向型のHSPも、“世界は今どういう方向に向かっているのか”といったことを良く考えます。そして深い意味を感じさせる関係に関心を持ち、意義深い人生の探求、社会的不正義、物事はどうしてそうなっているのか、ということに関心を持っている。実際、Jaeger はその著書、Making Work Work for the Highly Sensitive Person の中で、HSPには他人よりも“精神的な収入”が必要であり、その仕事がこの世界と意味のある関わり方を提供してくれるのなら、少ない収入でもその仕事を選ぶ、ということを明らかにしています。
  • HSEは年齢によって変わっていきます。若いHSEはかなり社交的で、友人からの誘いを断ることはめったにありません。これは彼らの持つ、強い身体的エネルギーが外向的な活動を楽しむことを可能にするからなのでしょう。しかしもっと成熟したあるいは年齢の重ねたHSEは、もはやこうした社会的な活動や友人、初めて会う人との触れ合いによって、動機づけられることはなくなります。それよりも、信頼できる、心を開いた、自分らしくいられる関係を楽しむようになります。
  • 私たちはその情熱を外に向けて表現し、大切と思えるもののためには、自身の心地よさを犠牲にしてでも、リスクを冒すことをためらいません。社会正義のために活動している多くのHSEがいます。そして彼らは自分の信じるもののために熱心に発言している。リーダーになるHSEもたくさんいます。でもそれは彼らが望んだからでも、スポットライトを浴びたいからでもありません。そうではなく、思いやりからくる強い信念が、しばしば他の人たちがやりたがらない役割へと私たちを押し上げるからです。この世界をもっと良くしようとする活動の中に、あなたはきっと多くのHSEの情熱と豊かな表現を見つけるでしょう。特に、私たちがお互いに恩益を得るような活動の中に。
  • 内向的なHSPとは別の意味で、私たちも内へと向かいます。それは主に、回復することや休養することが目的で、必ずしも一人でいることを“好む”からではありません。“内”へ入って、肉体的・精神的なエネルギーをチャージしたら、自分たちのビジョン、情熱そしてこの世界でやりたいことを表現するために、私たちは“外”へと向かいます。HSEは思いが通じ合う人たちと、自分のアイデアを共有することが好きなのです。
  • HSEは、温かく、社交的で、表情が豊か、そしてすぐに誰かと知り合いになれる。友達をつくり関係を続けていくことにほとんど苦労しません。でも、少数の親しい、誠実な、本物の友情だけで満たされもする。私はHSPリトリートにやってきたHSEを、いつだってすぐに見分けることができます。彼らの笑顔やオープンな態度、会話を見ていると、彼らがここに来て楽しんでいることに疑いを持たせないからです。逆に内向的なHSPの場合そのあたりを読むのが難しい。少なくともわかるのに2・3日かかります。でもその後は、彼らもHSEとまったく同じくらい人を惹きつけることがわかります。
  • HSEはよく、無意識のうちに現状に異議を唱える。自分が情熱を感じていることについては、つい発言してしまうのです。そしてそれによって自分たちへの注目を集めてしまうことになります。もちろんそれは私たちにとって心地よいことでではないので、身を引いてしまうことになる。そんな時私たちは内向的なように見えるかもしれません。ただそれでも、自分たちの価値観が脅かされる時には、私たちは情熱的になり、積極的に発言します。そして自分たちの見解を理解してもらうためには、刺激過多や人々の注目にも耐えるでしょう。不正なものへ立ち向かう時も同じです。
  • 大半のHSEはHSS(刺激追求型)である可能性が高い(http://hspjk.life.coocan.jp/HSS-Test.html)。しかし、HSPとして肉体的に負担がかかるような方法を必ずしもとるわけではありません。私たちは新しいものを追い求め、激しい体験をいとわない時もありますが、それはあくまで自分たちで選びとったものに対してです。同じことがHSSの内向型のHSPにも言えます。
  • HSE/ HSSにとって、刺激が少なすぎることは、刺激が多すぎることと同じで不安を生じさせます。ゆえに、私たちは“刺激の最適レベル”を見つけることが難しい。でもそれを理解し、体験し、維持することができれば、私たちは満足感をおぼえ、エネルギーを充電し、そして成長していくことができます。
  • 多くのHSEは仕事に大きな喜びを見出します。でもそれゆえに教える側になることも多い。例えばあるHSEの女性は、少女たちのバレーボールチームのコーチとして成功し、またその仕事を愛していました。でも、“表彰式”がある時は、彼女はそれをとても怖がっていました。マイクを使って子供たちに賞を与え、親たちの前でスピーチしなければならなかったからです。別のHSEは、自分の時間が自由に使えるようになった時、子育てはとても大きな喜びであることに気がつきました。また別のHSEは、教職に大変なやりがいを感じていたにもかかわらず、公立学校という環境には消耗してしまいました。
  • HSEは他の人たちとの、深く、有意義な関係のなかに喜びを見出す。誰かと協力している時、特に本当に思いや、本当の気持ちを共有しても安心だと思える時、最高の力を発揮できる。共通した関心をシェアすることで刺激され、私たちはより創造的に、よりビジョンを持つことができます。相互の関係や助け合い、共感によって私たちは成長する。それがなければ、私たちはしおれてしまうかもしれません。
  • 誤解されている、疎外されている、あるいは否定されていると感じることは、内向型のHSPがそうであるように、外向型の私たちにとっても、繰り返し立ち現れるテーマです。物事を深く感じ取ること、感情が豊かなこと、他者や世界全体を深く気に掛けることは、私たちHSEのアイデンティティなのです。

マイヤーズ・ブリッグスの視点からさらに

 私はマイヤーズ・ブリッグスの方法を大多数のHSPに当てはめて調査してみました。するとHSPの多くが“NF(直観・感情型)”気質であるこがわかりました。具体的に言うと、一番多いのがINFP、次いでJNFJ、それからENFP、ENFJ、ISFJときて、めったに見られないのがESFJです。“Ts(思考)”タイプのHSPも多く、INTP、INTJといった“NT(直観・思考型)”気質の中に見ることができます。ISTJ、ISTPのHSPは少なく、ESTJになると私は今までわずか二人しか会ったことがありません。
(※訳者注:I=内向型 E=外向型 N=直観 S=感覚 F=感情 T=思考 J=判断指向 P=知覚指向)

 そして、大勢のHSEが自分のことを内向型だと誤解しています。これは彼らがマイヤーズ・ブリックスを行うと、E(外向型)とI(内向型)の間の点差があまり見られないことが原因なのですが、それによって自分は両向型なのだとか、二つの指向性をバランス良く持っている、などの思い違いをするようになります。しかしこれは正しくありません。マイヤーズ・ブリックス理論では、両者の差があまりないことは、二つの機能の間でのなんらかの移り変わりや混乱があることを示唆している。例えば、HSEは外の世界にいる時、刺激過多になったり、追い立てられていると感じることがよくあります。しかしだからといって長いこと内側に向かっていると、すぐに飽きたり、気だるくなったり、軽度なうつを経験する時さえある。だから、外向型と内向型の間を行ったり来たりしている、あるいはその間で混乱しているとHSEが感じることはよくあることなのです。

 また、人混みや騒々しい場所を避ける、一人になりたいという必要性から、自分は内向的だと信じているHSEもたくさんいる可能性があります。そんな彼らは、たいてい外向的なHSPと外向的な非HSPの違いを誤解している。以下は、私の“Myers Briggs/HSP Overlay class(=マイヤーズ・ブリックスとHSPの重ね合わせクラス)”に参加し、HSPの特性を知って間もないある女性が話してくれたことです。

“…私のHSPとしての性質とマイヤーズ・ブリッグスへの理解を深めることはとてもエキサイトなことでした。それによって自分の敏感さと、外向的である自分の欲求の両方を理解することができたからです。でなければ私はいつまでも相反する感じを抱き続けていたことでしょう。やっとわかりました、私は“物思いに耽るのが好きな外向型”でも、“社交的な内向型”でもない―私はHSEなんだ、と。これがどんなに自分にピッタリきたか、とても説明できません。そして、外向性とHSPという文脈の中で考えることで、自分の人生のバランスを見つけることができました。バランス…それが私にはずっとわかりませんでした。これからは意識して、私の外向性と敏感さを大切にしていきます。そしてふたつの間のバランスを育て、意味のあるものにしていくことを、とっても楽しみにしています。”

では、外向的なHSPと内向的なHSPの間に違いはあるのか?

 あります。ただし、私の研究では、外向的HSPと内向的なHSPの差がきわめて小さいことを示しています。むしろHSPと、残りの人口の80%を占める、自分をSPS(感覚処理感受性)だと見なさない人たちとの差の方がずっと大きい。とはいえ外向性・内向性HSPの間にも、いくつかの違いはあります。

  • HSEは自分の考えや気持ちをシェアしたい時、書くよりも声にすることを好む。実際、何かわからないことがあってはっきりさせたい時、私たちは最初いくつかを書き留めるかもしれない。でも信頼できる友人と話をした方が、ずっと安心できるし、考えや気持ちを明確にすることができる。
  • 私たちはソーシャルメディアを通して私たちの個人的な生活・習慣をシェアすることは好まない。でも、それが知ってる人で、その人が好きで、信頼を寄せているのであれば、シェアすることをためらいません。
  • ソーシャルメディアで、よく内向型のHSPは電話に出ることが好きではない、と書かれていますがHSEはそんなことはありません。実のところ、私たちにとって電話かどうかは問題ではありません。話す相手や会話の中身、私たちにとって最も意味を持つのはそこなのです。確かに、よく知らない人から電話がかかってきたら、留守電に回してしまうかもしれません。でも、それが“HSPの仲間”、あるいは知っている誰か、信頼している誰かだったら、喜んで電話を取るし、きっと会話することで気持ちが豊かになったり、そこからエネルギーをもらったりするでしょう。

 HSEも内向的なHSPも雑談を楽しめないところは共通しています。ところが、HSPギャザリング・リトリートを4日間通して観察していると、“深い”ところへ行き、“本当の”自分自身をシェアする機会を経た二日目くらいからは、両方のHSPも、本人が驚くほど雑談ができるようになります。

最後に

 HSEは『Quiet―内向型人間の時代』に描かれているような“行動的な人”ではありません。また、私のパートナーのような非HSPで内向型の人を“思索的な人”ととするのも正確ではありません(冒頭のグラフにあるように非HSPの内向型は多数派を占めています)。ゆえに、以下のように気質を四つに分けるのが、正確かつ唯一正しい方法だと言えるでしょう。それは、HSE、内向型HSP,非HSPの外向型、そして非HSPの内向型です。この違いをきちんと理解する上で重要なことは、外向型・内向型の議論にDOESを重ね合わせてみることです(1、深い情報処理、2、刺激過多になりやすい、3、強い感情、共感性そして応答性の良さ、4、微妙なことへの敏感さ)。DOESが内向型・外向型の人すべてに当てはまることはありません。特にHSPではない人たちには当てはまらない。

 エレインは、前述したPsychology Today (2012)の記事を、次のような言葉で締めくくっています。

“…そうねぇ、この特性をどんな名前で呼ぶにせよ、最新の研究では、より敏感であろうとする(生物の)戦略は、複数の遺伝子によって総合的に形成されることがわかっています。そしてそれらの遺伝子にも、まだ名前がついていません。私たち科学者は、いろんな呼び名を考えます―内向的、引っ込み思案、シャイ、敏感、そしてレスポンシブ(反応が良い・感受性が良い)などと。もっといろんなことが分かってくれば、より正確な名前で呼ぶことができるようになるでしょう。今のところは、あなたが外向的で、でも物事を深く感じ取り、人生の意味をじっくりと考え、行動する前に立ち止まり、そしてダウンタイムの時間をたくさん必要とするなら、どうか、あせらず、もう少し待ってください。逆にあなたが、内向的で、でも大きな音はさほど気にせず、感情もそれほど強くなく、割と簡単に物事を決定できるのなら、そんなあなたも、どうかしばらく待っていて下さい。いつか私たち研究者は、みなさんについて確かな情報をつかむことができるようになるでしょう。…”

 この記事によって、この話題に関するみなさんの対話がひろがり、そして内向性・外向性・HSPについてより正確な定義がなされますように。そして、4億2千万のHSEの人たちが、自分がHSPだということがもより簡単に認識できるようになり、それによってすべてのHSPが、自分のタイプにあったセルフケアのプラン―自分に自信がもてるような―を立てられるようになりますように…願いをこめて。

ジャクリーン

 ジャクリーン・ストリックランド(LPC)は、外向型のHSP(ENFP)でありながら、自身の内向的な面も上手に発達させ、その側面を存分に発揮すると同時に、彼女にとってなくてはならないものにしている。彼女は1978年に非HSPの内向型の男性(ISTP)と結婚し、二人の成人した息子の母でもある。子供のうち一人はHSPで、もう一人も、きめ細やかな神経システムであるSPS特性の持ち主でない非HSPにもかかわらず、とても優しく思慮深い男性に成長している。そして2014年に生まれた最初の孫娘も、おそらくHSEだと彼女は確信している。外向型のHSPについては、“HSPとエンパワーメント”について書いた彼女の本の中でより詳しく説明されている。この本は、ジャクリーンの意思に逆らい、自然と湧き上がるように書かれたという。
 彼女は1993年にLPC(ライセンスド・プロフェッショナル・カウンセラー)の資格を取得。2000年からはもっぱらHSPだけを対象に、地道に活動を続けてきた。1991年にマイヤーズ・ブリッグスのプロフェッショナルとして認定された彼女は、2000年からは多くのHSPと共にその方法を共有している。彼女は、2001年にエレイン・アーロン博士と共に、HSPギャザリング・リトリートを始めた共同創始者でもある。

謝辞:この場でぜひ、レスリー・ドッドソンに感謝を述べさせてください。彼女は私の友人で同僚、世界的な人道主義者であり、そして外向型のHSPです。彼女とのお互いに頼り合える、協力し合える関係が、私の研究結果を高めてくれました。ありがとう、親愛なるレスリー。

参考文献;

Blesky, Pluess, (2009) Beyond Diathesis Stress: Differential Susceptibility to Environmental Influences, Psychological Bulletin, 2009, Vol. 135, No. 6, 885?908

Aron, Elaine (2012) Psychotherapy and the Highly Sensitive.

Aron, E. (2012, February 2). Psychology Today. Retrieved from Time Magazine: “The Power of (Shyness)” and High Sensitivity: https://www.psychologytoday.com/us/blog/attending-the-undervalued-self/201202/time-magazine-the-power-shyness-and-high-sensitivity

Cain, Susan, (2012) Quiet, The Power of Introverts in a world that won’t stop talking.

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