The Highly Sensitive Person

Research from 2022 on High Sensitivity

HSPの研究動向 2022年

By Elaine - 31 Comments

 みなさんに次々と研究をご紹介できてうれしい限りです。今回もたくさんあります、しかもバラエティに富んでます。もしあなたが、論文のタイトルや”まとめ”だけを読んで、流し読みしたいのならぜひどうぞ。でも、全体的な印象―つまり、このテーマに対する研究者の関心がどれだけ高まっているか、その雰囲気だけでもぜひ感じ取ってみてください。

※訳注:カッコの中の日本語タイトルは、訳者が便宜的に訳したもので、このような日本語のタイトルがあるわけではありません。コピー&ペーストして検索する際は、英語のタイトルのみコピーしてください。


1.The Temperament Trait of Environmental Sensitivity is Associated with Connectedness to Nature and Affinity to Animals.
(環境感受性の気質特性は、自然とのつながりや動物への親近感と関連する)

Annalisa, S., Francesca, L., Rachel, K., Liam, M., & Michael, P. (2022). The temperament trait of environmental sensitivity is associated with connectedness to nature and affinity to animals. Heliyon, 8(7), e09861.

 2つの研究が行われ、HSP尺度のスコアが高ければ高いほど、自然へのつながりが強くなることが示されました。ペットへの愛着を検討したひとつめの研究では、HSPとこの特性を持たない人たちの間で違いは見られませんでした。自分のペットを愛していない人などいないのですから、これは当然のことでしょう! ふたつめの研究では、動物の管理と保護という観点からの“動物への親和性”に注目しました。そして、HSPはこちらでは高い親和性を示したのです。つまり、この2つの研究において、HSPは自然へのつながりが強いことがわかりました。

まとめ:この研究結果は自明のことでしょう。HSPは戸外に出たり、動物と一緒にいることが大好きなのですから。そして今回、そのことが研究によって実証されました。


2. Genetic Sensitivity Predicts Long-Term Psychological Benefits of a Relationship Education Program for Married Couples
(遺伝的な敏感さは、夫婦のための関係教育プログラムの長期的な心理的有効性を予測する)

Pluess, M., Rhoades, G., Keers, R., Knopp, K., Belsky, J., Markman, H., & Stanley, S. (2022). Genetic sensitivity predicts long-term psychological benefits of a relationship education program for married couples. Journal of Consulting and Clinical Psychology.

 人間関係教育プログラムが夫婦間の関係向上や離婚防止に効果があることはよく知られています。HSPが介入(いじめ対策、レジリエンス、発達etc)に優れた反応を見せるのであれば、質の高い関係プログラムがHSPをどれだけ向上させるかを、当然研究者たちは知りたくなるでしょう。彼らは、2つの研究において182人と242人の実験参加者に協力してもらい、ゲノムワイド関連解析という最新の遺伝学的手法を使ってHSPを割り出しました。そして、この手法で遺伝子マーカーが示す敏感さのレベルが高い参加者ほど、観察期間において、関係を向上させる様々な方策による介入に高い効果があることがわかりました。

まとめ:この研究において、またしても、HSPは質の高いプログラムや介入によって、他の人たちよりもより恩恵を受けることが確認できました。


3. Sensory processing sensitivity and culturally modified resilience education: Differential susceptibility in Japanese adolescents
(感覚処理感受性と文化適応的レジリエンス教育:日本人青年の差次感受性)

Kibe, C., Suzuki, M., Hirano, M., & Boniwell, I. (2020). Sensory processing sensitivity and culturally modified resilience education: Differential susceptibility in Japanese adolescents. PloS one, 15(9), e0239002.

 HSPが介入によって受ける恩恵の高さについては、こちらの論文も同様です。この研究では、HSの十代の少女がレジリエンス教育プログラムによって、この特性を持たない少女より非常に高い効果を示したPluess(プルース)とBoniwellの研究を、日本の思春期の若者を対象に再現しています。こちらの実験では407人の東京の高校生(男女とも)が、レジリエンスの介入前・直後・3か月後の時点で、レジリエンス、自尊感情、自己効力感をテストされました。するとすべての学生に効果が見られ、特にHSPの若者においては、当初ウェルビーイング(※1)が著しく低かった若者ほど最も恩恵を受ける結果となりました。具体的には、うつの程度が減り、自尊感情が上がりました。

まとめ:さらにこの研究においても、私たちは介入に対するHSPの影響の受けやすさや、反応に違いがあることを確認することになりました。HSPの感受性差(※2)は、ネガティブな環境からより悪い影響を受ける可能性がある一方、この研究が示すように、HSPの若者であるというだけで、そのネガティブさが軽減したり、回避しやすいという好ましさがあるということです。

訳注1:ウェルビーイングは日本語では「健康で安心なこと」と訳せるが、この研究では「自分らしく周囲との関係を尊重し生きる力」という意味で用いられている。参考URL:https://j-pea.org/resilience/

訳注2:HSPの特性を示すこの「感受性差(理論)」という言葉には、いろんな日本語訳があります。「差次感受性(理論)」「感受性反応(理論)」などの訳がありますが、原語は「differential susceptibility」で、“differential”は”差、違い”、 susceptibilityは” 影響を受けやすいこと、感受性が鋭いこと、多感であること”を意味します。つまりHSPは”影響の受けやすさに差がある”という意味です。このサイトではシンプルに感受性差と訳しています。

※訳注:この論文は、日本人の岐部智恵子氏、平野真理氏らによる研究です! https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0239002


4. Environmental sensitivity and cardiac vagal tone as moderators of the relationship between family support and well-being in low SES children: An exploratory study.
(社会経済的地位(SES)の低い子どもの幸福感(ウェルビーイング)と家族支援の関係のモデレーターとしての環境感受性と心臓迷走神経緊張:探索的研究)

Moscardino, U., Scrimin, S., Lionetti, F., & Pluess, M. (2021). Environmental sensitivity and cardiac vagal tone as moderators of the relationship between family support and well-being in low SES children: An exploratory study. Journal of Social and Personal Relationships, 38(9), 2772-2791.

 社会経済的に不利な家庭の7才の子どもたちに、家族内でどの程度のサポートを受けていると感じているか、また身体的・精神的なウェルビーイングを評価するために、個別に面接を行いました。子どもたちの敏感さは、研究者らが開発した一連のタスクによって測定しています。この研究で興味深いのは、迷走神経と心臓がどれだけ良好に協調しているかを示す、心臓迷走神経緊張が変数に含まれていることです。この“緊張”が高い人ほど、ストレスにうまく対処できています。子どもたちは敏感さが高い・中程度・低いの3つのグループに分けられ、心臓迷走神経緊張を測定されました。すると、興味深いことに、それぞれのグループに違いは見られませんでした。ただし、緊張が高く、家庭でのサポートが低いもしくは中程度のHSCは、同じく家庭でのサポートが低い・中程度の、敏感ではない子どもたちに比べ、ウェルビーイングがとても良いことが証明されました。

まとめ:心臓迷走神経緊張と高敏感性の間に関連がなかったことは興味深い。ただし、緊張が高いことが確実にHSCの役には立っており、もしかしたらそれを発展させることができるかもしれません。

訳注:家族支援レベルが高い場合、迷走神経活動や敏感さのレベルに関わらず、子どもたちは高いレベルの幸福感を持っていました。


5. Is Sensory Processing Sensitivity associated with psychoactive substance use?
(感覚処理感受性は、精神活性物質の使用と関連性があるか?)

Mary-Krause, M., Bustamante, J. J. H., Collard, L., & Melchior, M. (2022). Is Sensory Processing Sensitivity associated with psychoactive substance use? Emerging Trends in Drugs, Addictions, and Health, 100038.

 25~44才の成人のフランス人から得られたデータをもとに、SPS(感覚処理感受性)と精神活性物質の使用程度に関連性があるかどうかを研究者たちは調査しました。SPSの確認には12項目のHSP尺度を使用。精神活性物質には、タバコ、アルコール、大麻、違法ドラッグが含まれています。結果、SPSの高い人は実験参加者の14%に認められました。つまり、この両者の間に関連性はありませんでした。

まとめ:もしあなたが「HSPはドラッグを使用する傾向がありますか?」と尋ねられたら(私はよく尋ねられます)、研究結果はそのような傾向はないことを示唆しています、と答えることができます。

全体のまとめ:今回ご紹介した、HSPはどう異なるかについての研究の数々―自然とのつながりから、ドラッグ使用、介入による効果にいたるまで―をミックスして考えると、とても興味深くなります。こんなにも幅広く影響が出るのは、HSPのような生まれながらの気質が、人がとるあらゆる行動に影響を及ぼすからでしょう。そう、ですから、みなさんどうぞこれらの検証を楽しんでください。みなさんの気質が本物で、その気質が素晴らしい効果を持っていることを証明してくれるこれらの検証を。

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